腹痛とは、お腹に感じる痛みのことで、程度や持続時間、痛みの場所によってさまざまな種類があります。一般的に、腹痛は消化器系のトラブルや内臓の異常によって引き起こされることが多いですが、その他の原因による場合もあります。軽い腹痛であれば一時的なもので自然に治ることが多いですが、強い痛みや長引く痛みは、何らかの病気が隠れている可能性があるため、注意が必要です。
腹痛は、急性のものから慢性のものまで多岐にわたります。急性の腹痛は突然発症し、緊急対応が必要な場合があります。一方、慢性的な腹痛は断続的に続くことが多く、原因を特定することが難しい場合があります。
腹痛の原因となる病気
急性胃腸炎
ウイルスや細菌、食中毒などによる感染が原因で、急性の腹痛や下痢、嘔吐が生じます。特に夏場や冬場に多く見られます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜に潰瘍ができることで、食後や空腹時に強い痛みが発生します。ピロリ菌感染やストレスが原因とされています。
虫垂炎
いわゆる「盲腸」のことです。右下腹部に鋭い痛みが生じ、発熱を伴うことが多いです。放置すると、腹膜炎を引き起こす恐れがあるため、早急な治療が必要です。
胆石症
胆のうや胆管に石ができ、右上腹部に激しい痛みが発生します。食後に痛みが強くなることがあり、手術が必要になる場合もあります。
腸閉塞
腸が詰まることで、腹部に激痛や吐き気が生じます。放置すると腸が壊死する可能性があり、緊急手術が必要です。
腹痛の種類
腹痛には、痛みの感じ方や発生する場所によっていくつかの種類があります。
急性腹痛
突然発生し、強い痛みを伴うことが多いです。虫垂炎や腸閉塞、胆石症などが原因で起こることが多く、緊急対応が必要な場合があります。
慢性腹痛
数週間から数ヶ月にわたって続く腹痛です。過敏性腸症候群や慢性胃炎などが原因となることが多く、日常生活に支障をきたす場合があります。
間欠的腹痛
痛みが周期的に現れる腹痛です。月経痛や胆石症、腎結石などが原因で、特定の条件下で痛みが発生します。
局所的腹痛
お腹の特定の部位に痛みが集中する場合です。例えば、右下腹部の痛みは虫垂炎、上腹部の痛みは胃炎や胃潰瘍が疑われます。
全体的腹痛
お腹全体に痛みが広がる場合で、胃腸炎や腸閉塞、腹膜炎などが原因となることが多いです。特に広範囲に痛みが広がる場合は注意が必要です。
腹痛の診断・検査
腹痛の原因を特定するためには、医療機関での診断と検査が重要です。
問診
痛みの強さや場所、発症時期、食事や排便との関連性などを詳しく聞き取ります。これにより、痛みの原因を絞り込みます。
身体診察
医師が腹部を触診し、痛みの位置や硬さ、腫れの有無を確認します。また、聴診器を用いて腸の動きや蠕動音を評価します。
血液検査
感染症や炎症、貧血、肝機能や腎機能の状態を確認するために血液検査が行われます。白血球数やCRP値が上昇している場合、炎症が疑われます。
画像検査
X線、超音波、CTスキャンなどを用いて、内臓の状態や異常を確認します。これにより、腫瘍や結石、腸閉塞などの原因が明らかになります。
内視鏡検査
胃カメラや大腸カメラを用いて、消化管内を直接観察します。潰瘍や腫瘍、炎症の有無を確認し、必要に応じて組織を採取します。
危険な腹痛とは
腹痛の中には、早急な対応が必要な危険な腹痛もあります。
突然の激しい痛み
突然始まる激しい痛みは、急性の虫垂炎や腸閉塞、胆石症などの緊急性の高い病気が疑われます。特に痛みが持続する場合は、直ちに受診が必要です。
発熱を伴う腹痛
腹痛に加えて発熱がある場合、感染症や炎症が進行している可能性があります。例えば、胆のう炎や腸炎、腎盂腎炎が原因となることが多いです。
吐血や黒い便がある場合
吐血や黒い便(タール便)が見られる場合、消化管出血が疑われます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍が進行している可能性があり、早急な治療が必要です。
長時間続く痛み
腹痛が数時間以上続く場合や、痛みが徐々に悪化する場合は、緊急対応が必要な可能性があります。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は注意が必要です。
これらの危険な腹痛は放置せず、早期に適切な対応を行うことで、重篤な状態を防ぐことができます。
腹痛の治療方法
腹痛の治療は、原因に応じて異なります。
薬物療法
消化器系の疾患が原因の場合、胃薬や消化酵素薬、鎮痛薬、抗生物質などが使用されます。また、腸の運動を促進する薬や下痢止めも用いられることがあります。
手術療法
虫垂炎や腸閉塞、胆石症など、手術が必要な場合は、早急に外科的治療が行われます。特に命に関わる状態では、緊急手術が行われることがあります。
生活習慣の改善
慢性の腹痛の場合、食事の内容や食事の回数、ストレス管理など、生活習慣の改善が求められます。特に過敏性腸症候群や慢性胃炎では、生活習慣の見直しが重要です。
精神的サポート
精神的ストレスが腹痛の原因となっている場合、カウンセリングやリラクゼーション療法が効果的です。心身のバランスを整えることが、症状の改善につながります。
腹痛の予防方法・気を付けること
腹痛を予防するためには、日常生活での工夫が重要です。
バランスの取れた食事
食事はバランス良く摂り、暴飲暴食や偏った食事を避けることが大切です。
規則正しい生活習慣
規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠を取ることが重要です。ストレスを溜め込まず、適度な運動を取り入れることで、消化器の働きを整えましょう。
適度な水分補給
便秘を予防するためにも、適度な水分補給が必要です。特に食物繊維を多く含む食事とともに、水分をしっかりと摂取することが効果的です。
アルコールとタバコの制限
アルコールやタバコは胃腸に負担をかけ、腹痛を引き起こす原因となることがあります。これらを控えることで、胃腸の健康を保ちましょう。
これらの予防策を実践することで、腹痛を未然に防ぎ、健康な生活を送ることができます。
腹痛についてよくある質問
腹痛が数日以上続く場合や、痛みが強くなっていく場合は、医療機関を受診することが重要です。早めに原因を特定し、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぐことができます。
はい、ストレスは過敏性腸症候群などの原因となり、腹痛を引き起こすことがあります。ストレス管理やリラクゼーションが、症状の改善に役立ちます。
胃薬で症状が改善しない場合、胃以外の原因が考えられます。例えば、腸や胆のう、膵臓などの問題があるかもしれません。専門医の診察を受けることが必要です。
子供の腹痛は、感染症や便秘、ストレスが原因であることが多いですが、痛みが強い場合や他の症状がある場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
高齢者は、腹痛の原因が深刻な病気であることが多く、症状が出にくいことがあります。特に突然の腹痛や長引く痛みは、すぐに医師に相談することが重要です。
受診のタイミング・目安
腹痛が続く場合、以下のような状況では、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
数日間続く腹痛
腹痛が数日以上続く場合は、慢性疾患や感染症の可能性が考えられます。
突然の激しい痛み
突然の激しい痛みは、緊急性の高い状態を示していることが多いため、直ちに受診が必要です。
発熱や吐き気を伴う場合
発熱や吐き気、嘔吐がある場合、感染症や炎症が疑われます。早めに治療を開始することが重要です。
排便・排尿に異常がある場合
便秘や下痢、血便、排尿時の痛みなどが伴う場合は、消化器や泌尿器系の病気が考えられます。
腹痛は適切な診断と治療を行うことで、多くの場合は改善が期待できます。症状が続く場合や強い痛みがある場合は、早期に医療機関を受診しましょう。

仁川診療所
院長 横山 亮
(よこやま りょう)