喉の痛みとは
喉が痛いとき、私たちは飲み込むたびに不快感を感じ、会話をするのもつらくなります。喉の痛みは、喉の奥や周囲の組織に炎症が起きることで生じる症状で、多くの人が経験する身近な健康問題です。軽い違和感から、食事や水分摂取が困難になるほどの激しい痛みまで、その程度はさまざまです。
喉の痛みの多くは、風邪などのウイルス感染によるもので、適切なケアをすれば数日から1週間程度で自然に回復します。しかし、痛みが長引いたり、他の心配な症状を伴う場合は、より深刻な病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。
喉の痛みを引き起こす主な病気
喉の痛みの原因は実にさまざまです。最も一般的なのは、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症です。これらの感染症では、喉の痛みとともに、鼻水、くしゃみ、咳、発熱などの症状が現れます。通常は特別な治療をしなくても、体の免疫力によって自然に回復していきます。
細菌感染による咽頭炎や扁桃炎も、喉の痛みの重要な原因です。特に溶連菌による感染は、喉の激しい痛みと高熱を引き起こすことがあり、抗生物質による治療が必要になります。扁桃腺が赤く腫れ、白い膿が付着しているのを見ることもあります。
アレルギーも意外に多い原因の一つです。花粉症の季節になると、鼻水やくしゃみだけでなく、喉のイガイガ感や痛みを訴える人が増えます。ハウスダストやペットの毛、カビなども、年間を通じてアレルギー性の喉の痛みを引き起こす可能性があります。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで起こる病気ですが、この胃酸が喉まで達すると、喉の痛みや違和感の原因となります。特に食後や横になったときに症状が悪化する傾向があり、胸やけを伴うことも多いです。
まれですが、喉頭がんなどの悪性腫瘍が原因となることもあります。特に喫煙歴のある中高年の方で、声のかすれや喉の違和感が長期間続く場合は、早めの受診が大切です。
喉の痛みに伴う症状
喉の痛みといっても、その感じ方は人によって異なります。「喉がチクチクする」「焼けるような痛み」「何かが引っかかっているような違和感」など、患者さんによってさまざまな表現で語られます。痛みは飲み込むときに強くなることが多く、食事が苦痛になることもあります。
声がかすれるのも、よく見られる症状です。喉の炎症が声帯に及ぶと、声が出しにくくなったり、かすれ声になったりします。朝起きたときに特に症状が強く、話しているうちに少し改善することもあります。
咳や痰も、喉の痛みに伴って現れることがあります。最初は乾いた咳から始まり、次第に痰が絡むようになることもあります。痰の色や性状は、原因となっている病気を推測する手がかりになることがあります。
全身症状として、発熱や倦怠感が現れることもあります。特に細菌やウイルスによる感染症の場合、体がだるく、食欲がなくなり、頭痛や関節痛を伴うこともあります。首のリンパ節が腫れて、触ると痛みを感じることもあります。
診断のための検査
喉の痛みの原因を特定するために、医師はまず詳しい問診を行います。いつから症状が始まったか、どのような痛みか、他にどんな症状があるか、最近の生活状況などを聞き取ります。この情報は診断にとても重要です。
診察では、口を大きく開けてもらい、喉の奥を観察します。喉の赤み、腫れ、膿の有無などを確認し、必要に応じて舌圧子を使って詳しく観察します。首のリンパ節の腫れも触診で確認します。
細菌感染が疑われる場合は、綿棒で喉の粘膜を拭い取る迅速検査を行うことがあります。特に溶連菌感染症の診断には、この検査が有用です。結果は数分から数十分で判明し、その場で治療方針を決定できます。
血液検査では、白血球数やCRP(炎症反応)の値を調べることで、体内の炎症の程度を評価します。これらの値が高い場合は、細菌感染の可能性が高くなります。
症状が長引く場合や、がんなどの重篤な病気が疑われる場合は、内視鏡検査やCT検査などの画像検査を行うこともあります。これらの検査により、喉頭や周囲の組織の状態を詳しく観察できます。
注意すべき危険な症状
喉の痛みの多くは軽症で自然に治りますが、中には緊急の対応が必要な危険な状態もあります。呼吸が苦しくなるような喉の腫れは、最も注意すべき症状です。アレルギー反応による喉頭浮腫や、急性喉頭蓋炎などが原因で起こることがあり、窒息の危険があるため、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
喉の痛みが何週間も続き、改善の兆しが見られない場合も要注意です。特に声のかすれや、首にしこりを触れる場合は、喉頭がんなどの悪性腫瘍の可能性を考える必要があります。早期発見が治療成績を大きく左右するため、早めの受診が大切です。
高熱を伴う激しい喉の痛みも、適切な治療が必要です。扁桃周囲膿瘍などの重篤な感染症では、膿がたまって気道を圧迫することもあるため、抗生物質による治療や、場合によっては外科的な処置が必要になります。
喉の痛みが耳まで広がる場合も注意が必要です。これは感染が中耳に波及している可能性や、深部の感染症を示唆することがあります。放置すると聴力に影響することもあるため、早めの診断と治療が重要です。
喉の痛みの治療法
喉の痛みの治療は、原因によって大きく異なります。ウイルス性の風邪による喉の痛みの場合、特効薬はありませんが、症状を和らげる対症療法が中心となります。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛解熱薬で痛みを軽減し、十分な休養と水分摂取で回復を待ちます。
細菌感染が原因の場合は、抗生物質による治療が必要です。特に溶連菌感染症では、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質を、医師の指示通りに最後まで服用することが重要です。途中で止めると、再発や合併症のリスクが高まります。
アレルギーが原因の場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬が効果的です。また、原因となるアレルゲンを避けることも重要で、マスクの着用や室内の清掃、空気清浄機の使用なども症状の改善に役立ちます。
逆流性食道炎による喉の痛みには、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)が処方されます。また、食後すぐに横にならない、就寝時に上体を少し高くする、刺激物を避けるなどの生活指導も行われます。
うがいは、どのような原因の喉の痛みにも有効な補助療法です。塩水うがいや、医師から処方されたうがい薬を使用することで、喉の炎症を和らげ、細菌やウイルスを洗い流す効果があります。
日常生活での予防と対策
喉の痛みを予防するためには、日々の生活習慣が大切です。まず基本となるのは、手洗いとうがいの習慣です。外出から帰ったら、石けんで丁寧に手を洗い、うがいをすることで、病原体の侵入を防ぐことができます。特に風邪が流行する季節には、この習慣を徹底することが重要です。
喉の乾燥は、痛みや感染のリスクを高めます。室内の湿度を50~60%に保つことが理想的で、加湿器の使用や、濡れタオルを干すなどの工夫が有効です。また、こまめな水分補給も喉の潤いを保つために大切です。温かいお茶やはちみつレモンなどは、喉を潤すだけでなく、痛みを和らげる効果も期待できます。
食生活も喉の健康に影響します。ビタミンCを多く含む果物や野菜、亜鉛を含む牡蠣やナッツ類は、免疫力を高める効果があります。逆に、辛い食べ物や熱すぎる飲み物は喉を刺激するため、痛みがあるときは避けた方がよいでしょう。
喫煙は喉に最も悪影響を与える習慣の一つです。タバコの煙は喉の粘膜を直接刺激し、慢性的な炎症を引き起こします。また、喉頭がんのリスクも大幅に高めるため、禁煙は喉の健康を守る上で極めて重要です。受動喫煙も同様に有害なので、煙の多い環境は避けるようにしましょう。
声の使いすぎも喉を痛める原因となります。大声を出したり、長時間話し続けたりすることは避け、適度に声を休める時間を作ることが大切です。職業上声を多く使う方は、正しい発声法を身につけることも予防につながります。
喉の痛みについてよくある質問
喉の痛みが1週間以上続く場合や、他の症状を伴う場合は、医療機関を受診することが重要です。単なる風邪ではない可能性があり、適切な診断と治療が必要かもしれません。特に徐々に悪化する場合や、声のかすれ、首のしこりなどを伴う場合は、早めの受診をお勧めします。
はい、いくつかの家庭療法があります。温かい飲み物(はちみつを加えた温かいお茶や生姜湯など)は喉の痛みを和らげます。ただし、1歳未満の乳児にははちみつを与えてはいけません。また、塩水うがい(コップ1杯のぬるま湯に小さじ半分の塩を溶かしたもの)も効果的です。加湿器を使用して部屋の湿度を保つことも、喉の乾燥を防ぎ症状を軽減します。
喉の痛みがあるときは、刺激の強い食べ物は避けるべきです。具体的には、辛い料理(唐辛子、わさび、からしなど)、酸っぱい食べ物(柑橘類、酢の物など)、硬い食べ物(せんべい、ナッツ類など)、熱すぎる飲食物などです。これらは喉の粘膜を刺激し、痛みを悪化させる可能性があります。温かくて柔らかい食べ物(おかゆ、うどん、スープなど)を選ぶとよいでしょう。
喉の痛みが悪化する原因はいくつかあります。感染症が進行している場合、適切な治療を受けていない場合、喉の乾燥が続いている場合、声の使いすぎ、喫煙や受動喫煙、アルコールの摂取、睡眠不足やストレスによる免疫力の低下などが考えられます。原因を特定し、それに応じた対策を講じることが重要です。
軽度の喉の痛みであれば、市販の鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)やのど飴、トローチなどが症状の緩和に役立ちます。ただし、これらは対症療法であり、根本的な原因を治すものではありません。症状が3日以上続く場合、悪化する場合、高熱や他の心配な症状を伴う場合は、自己判断に頼らず医師の診察を受けることをお勧めします。
受診の目安とタイミング
喉の痛みで医療機関を受診すべきタイミングを判断することは重要です。呼吸が苦しくなるような急激な喉の腫れは、緊急事態です。すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
高熱(38.5度以上)を伴う激しい喉の痛みも、早めの受診が必要です。特に水分が取れないほどの痛みがある場合は、脱水症状を起こす危険があるため、点滴治療が必要になることもあります。
喉の痛みが2週間以上続く場合や、声のかすれが1ヶ月以上改善しない場合は、必ず専門医の診察を受けてください。まれですが、悪性腫瘍の可能性も考慮する必要があります。
首にしこりを触れる、耳の痛みを伴う、血痰が出るなどの症状がある場合も、早めの受診をお勧めします。これらは通常の喉の痛みとは異なる病気のサインかもしれません。
まとめ
喉の痛みは誰もが経験する身近な症状ですが、その原因は実にさまざまです。多くは風邪などのウイルス感染によるもので、適切なケアで自然に回復しますが、時には注意が必要な病気のサインであることもあります。
日頃から手洗い・うがいを心がけ、喉を乾燥させないよう注意し、規則正しい生活を送ることが、喉の健康を守る基本です。そして、症状が長引いたり、心配な症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
喉は、呼吸や食事、会話など、私たちの生活に欠かせない重要な器官です。適切な知識を持って、大切に守っていきましょう。

仁川診療所
院長 横山 亮
(よこやま りょう)