体重減少とは、自分で意識して減らそうとしていないのに体重が落ちてしまう状態を指します。ダイエットや運動による減量とは全く異なり、思い当たる原因がないのに急に体重が減る場合は、体からの重要なサインかもしれません。栄養状態の悪化や筋肉が減ってしまうなど、全身に影響が及ぶこともあるため、原因をしっかり見極めて適切に対処することが大切です。
体重の変化には様々な病気や体の異常が隠れている可能性があります。そのため包括的な診察や検査が必要になることが多く、体重の減少に気づいたら早めに医療機関を受診することをおすすめします。
体重が減る原因となる主な病気
体重減少を引き起こす病気は多岐にわたります。ここでは代表的なものをご紹介します。
がん
原因不明の体重減少は、がんの初期サインの一つとして知られています。特に胃がん、大腸がん、肺がんといった消化器や呼吸器のがんで見られやすく、理由がわからないまま体重が減り続ける場合は要注意です。
糖尿病
1型糖尿病では、インスリン不足によって血糖値が異常に上がり、体がエネルギーをうまく使えなくなって体重が減ります。2型糖尿病でも同様の症状が現れることがあります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺ホルモンが過剰に出ることで体の代謝が異常に活発になり、体重減少につながります。動悸や汗をかきやすくなるといった症状を伴うことも多いです。
消化器の病気
潰瘍性大腸炎やクローン病のような慢性的な腸の炎症では、栄養の吸収がうまくいかず体重が落ちます。胃や腸の潰瘍も体重減少の原因となります。
心不全
心臓の働きが弱まると全身への血液循環が悪くなり、食欲が落ちたり代謝に異常が出たりして、体重が減ることがあります。
病気以外で体重が減る要因
医学的な病気以外にも、体重減少を引き起こす要因がいくつかあります。
心の問題やストレス
強いストレスやうつ病は食欲を低下させ、結果として体重減少につながります。精神的な負担が食事のパターンを乱し、過食や拒食といった極端な状態を招くこともあります。
薬の副作用
抗がん剤、抗うつ薬、糖尿病の治療薬など、一部の薬は食欲不振や消化の問題を起こし、体重減少の原因になることがあります。
加齢による変化
年齢を重ねると味覚や嗅覚が鈍くなり、食事への関心が薄れがちです。また飲み込む力が弱まったり、消化吸収の効率が下がったりすることも影響し、高齢の方では体重減少がよく見られます。
生活リズムの乱れ
不規則な食生活、運動不足、睡眠不足といった生活習慣の乱れも、体重減少を招く要因となります。
原因を調べる検査
体重減少の背景にある原因を特定するため、様々な角度から検査が行われます。
問診と診察
まず医師が症状の経過、これまでの病歴、日常生活の様子などを詳しく聞き取り、体の状態をチェックします。これによって体重減少の原因を推測し、必要な検査を絞り込んでいきます。
血液検査
糖尿病、甲状腺の異常、貧血、感染症の有無などを確認します。同時に栄養状態や肝臓・腎臓の働きも評価できます。
画像診断
がんや消化器の病気を調べるため、レントゲン、CT、MRI、超音波検査などを行います。内臓の異常や腫瘍がないかを詳しく見ることができます。
内視鏡検査
消化器系の問題が疑われる際は、胃カメラや大腸カメラで食道から腸までの状態を直接観察します。潰瘍や炎症、できものの有無を確認できます。
精神面の評価
ストレスやうつ病が関係していると考えられる場合は、精神科医による専門的な評価が行われることもあります。
こうした検査を組み合わせることで原因を明らかにし、最適な治療方針を立てていきます。
治療の進め方
体重減少の治療は、その根本的な原因によって変わってきます。
元となる病気の治療
がん、糖尿病、甲状腺機能亢進症など、体重減少を引き起こしている病気がある場合は、まずその治療が優先されます。薬物療法、手術、放射線治療、化学療法などが状況に応じて選択されます。
栄養状態の改善
栄養が不足している場合は、栄養士による食事指導や栄養補助食品の利用が勧められます。栄養状態が深刻な場合は、点滴で直接栄養を補給することもあります。
心のケア
ストレスやうつ病が原因で体重が減っている場合、心理的なサポートが重要になります。カウンセリングや認知行動療法、必要に応じて抗うつ薬の処方が検討されます。
生活習慣の見直し
規則正しい生活を取り戻すことも改善への大切なステップです。適度な運動、十分な睡眠、バランスの良い食事を心がけましょう。
よくある疑問にお答えします
A.思い当たる理由がない急激な体重減少は、何らかの病気が隠れている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。特に食欲が落ちたり疲れやすくなったりしている場合は注意が必要です。
体重減少が長引くと、筋力低下、免疫力の低下、貧血、骨粗しょう症など様々な健康リスクが高まります。早期に原因を見つけて適切な治療を受けることが大切です。
はい、ストレスは食欲不振や消化の問題を引き起こし、体重減少につながることがあります。長期間ストレスが原因で体重が減っている場合は医師に相談しましょう。
高齢になると食欲低下や消化機能の衰えで体重が減ることは珍しくありません。ただし病気が原因の場合もあるため、きちんと評価して対応することが必要です。
意図的に減らそうとしていないのに体重が落ちる場合、何らかの病気や体の異常が考えられます。特に普通に食べているのに痩せていく場合は、早めに受診しましょう。
病院を受診する目安とタイミング
1ヶ月で体重の5%以上が減った場合
特に心当たりがない体重減少が続いているなら、何らかの病気が関わっている可能性があります。
食欲不振や疲れが続く場合
食事量は変わっていないのに体重が減り、さらに疲労感が取れない場合は、体の中で何か異常が起きているかもしれません。
お腹の症状や痛みがある場合
吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状を伴う場合は、消化器系の病気が疑われます。
高齢の方で体重減少が見られる場合
高齢者の体重減少は深刻な病気のサインであることが多いため、早めに医師の診察を受けることが重要です。
体重減少を放置せず、早期に適切な診察を受けることで、重大な病気の早期発見や治療につながります。体からのサインを見逃さず、気になることがあれば遠慮なく医療機関に相談してください。

仁川診療所
院長 横山 亮
(よこやま りょう)