宝塚市の内科・循環器内科・皮膚科の仁川診療所

eczema

湿疹

肌が赤くなってかゆい、ぶつぶつができて気になる、カサカサして痛い。
こうした症状に悩まされていませんか。それは湿疹かもしれません。

湿疹は、皮膚に炎症が起こることで赤みやかゆみ、発疹などが現れる状態を指します。皮膚炎とも呼ばれるこの症状は、日常生活で誰もが経験しうる非常にありふれた皮膚トラブルです。軽いものから慢性的なものまで程度はさまざまですが、共通しているのは皮膚の不快感と生活の質への影響です。

湿疹の原因は実に多様です。アレルギー反応、外部からの物理的な刺激、皮膚の乾燥、精神的なストレスなど、さまざまな要因が単独で、あるいは複合的に作用して発症します。また湿疹は一度治っても再び現れやすく、慢性化することも少なくありません。だからこそ、原因を理解し、適切な治療とケアを行うことが重要なのです。

早期に対処すれば症状を軽減でき、適切な予防策を講じることで再発のリスクも下げられます。この記事では、湿疹の原因から治療、予防まで詳しく解説していきます。

湿疹はなぜ起こるのか

湿疹を引き起こす要因は一つではありません。複数の原因が絡み合って症状が現れることも多いのです。

アレルギー反応

特定の物質に対する免疫系の過剰な反応が湿疹を引き起こします。食べ物(卵、牛乳、小麦、そばなど)、薬剤、金属(ニッケル、コバルトなど)、花粉、ダニ、動物の毛やフケなどがアレルゲンとなりえます。これらの物質が皮膚に接触したり体内に入ったりすると、免疫系が反応して炎症が起こります。アレルギー体質の方は特に注意が必要です。

外部からの刺激

日常生活の中で皮膚はさまざまな刺激にさらされています。摩擦や圧迫といった物理的な刺激、洗剤や石鹸、シャンプー、化粧品などに含まれる化学物質、汗や唾液なども刺激になりえます。敏感肌の方や皮膚のバリア機能が低下している方は、こうした刺激に対して湿疹を起こしやすくなります。

乾燥による影響

皮膚が乾燥すると、表面のバリア機能が弱まります。このバリアは外部の刺激から肌を守る大切な役割を担っているため、機能が低下すると些細な刺激にも反応しやすくなり、湿疹が発生しやすくなります。冬季や乾燥した環境で湿疹が悪化しやすいのはこのためです。高齢になると皮脂の分泌が減るため、乾燥による湿疹のリスクが高まります。

ストレスの影響

精神的なストレスや疲労の蓄積も湿疹の原因となります。ストレスは免疫機能やホルモンバランスに影響を与え、皮膚の炎症を起こしやすくします。また、ストレスによって無意識に肌をかいてしまうことも症状を悪化させる要因です。

自分の湿疹がどの要因によるものか把握することが、適切な対処の第一歩となります。

こんな症状があったら湿疹かも

湿疹の症状は人によってさまざまですが、典型的なものをご紹介します。

強いかゆみは湿疹の最も特徴的な症状です。昼間は我慢できても、夜になると無意識にかいてしまうことがよくあります。かいてしまうと皮膚に傷がつき、細菌が侵入して二次感染を起こすこともあるため注意が必要です。

赤みと腫れも典型的です。炎症が起きている部分は赤くなり、触ると熱を持っていることもあります。腫れが伴う場合もあり、見た目にも気になる状態になります。

発疹やぶつぶつが現れることもあります。小さな丘疹(盛り上がり)や水疱(水ぶくれ)ができ、これらが破れると滲出液が出てジクジクした状態になります。この段階は特に不快で、衣類にくっついたり、感染リスクが高まったりします。

乾燥と皮膚の硬化は慢性化のサインです。長期間湿疹が続くと、皮膚が乾燥して硬くなり、ひび割れが生じることもあります。さらに進行すると、皮膚が厚くゴワゴワした感じになり(苔癬化、色素沈着を起こして黒ずんでしまうこともあります。

これらの症状が現れたら、早めに対処することで悪化を防げます。

湿疹の主な種類

接触皮膚炎

何らかの物質が皮膚に接触することで起こる湿疹です。刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の2種類があります。前者は洗剤や酸・アルカリなどの刺激物が原因で、誰にでも起こりえます。後者は特定の物質に対してアレルギーを持つ人だけに起こります。金属アレルギーによるかぶれや、化粧品かぶれなどがこれにあたります。

アトピー性皮膚炎

遺伝的な要因とアレルギー体質、環境要因が複雑に絡み合って発症する慢性疾患です。子どもに多く見られますが、成人になっても続くケースや、成人になってから発症するケースもあります。良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、長期的な管理が必要です。

脂漏性皮膚炎

皮脂の分泌が多い頭皮、顔(特に眉間や鼻の脇)、胸部、背中などに発生します。マラセチアという真菌の関与が指摘されており、フケやかゆみ、赤みが特徴的です。

貨幣状湿疹

コインのような円形の湿疹が現れることからこの名前がつきました。主に手足に発生し、特に冬季の乾燥する時期に悪化しやすい傾向があります。非常にかゆみが強く、慢性化しやすいタイプです。

手湿疹(手荒れ)

水仕事が多い方や美容師、医療従事者など、頻繁に手を洗ったり刺激物に触れたりする職業の方に多く見られます。指先や手のひらがカサカサになり、ひび割れや痛みを伴います。

自分の湿疹がどのタイプか知ることで、より効果的な対処が可能になります。

効果的な治療方法

湿疹の治療は症状の程度と原因によって変わりますが、基本的なアプローチをご紹介します。

外用薬による治療

軽度から中等度の湿疹には、ステロイド外用薬が第一選択となります。炎症を抑え、かゆみを和らげる効果があります。ステロイドは強さによってランク分けされており、症状や部位に応じて適切な強さのものが処方されます。顔や首など皮膚の薄い部分には弱めのもの、体幹や手足には強めのものが使われることが多いです。

ステロイドに抵抗がある方もいますが、医師の指示に従って適切に使用すれば安全で効果的な薬です。ただし長期間の使用は副作用(皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張するなど)のリスクがあるため、症状が改善したら徐々に減らしていきます。

非ステロイド性の抗炎症薬やタクロリムス軟膏などの免疫抑制外用薬も選択肢となります。

内服薬

かゆみが強く我慢できない場合や、広範囲に湿疹が広がっている場合は、抗ヒスタミン薬が処方されます。かゆみを抑えることで、掻き壊しによる悪化を防ぎます。眠気が出るタイプと出にくいタイプがあるため、生活スタイルに合わせて選択できます。

重症例では、免疫抑制薬や生物学的製剤が使われることもあります。

保湿ケアの重要性

どんな治療を行う場合でも、保湿は欠かせません。皮膚のバリア機能を回復・維持するため、保湿剤を1日2回以上、こまめに塗ることが推奨されます。特に入浴後5分以内に塗ると効果的です。保湿剤には、ワセリンなどの油性のものから、ローションタイプまでさまざまあるため、季節や部位に応じて使い分けましょう。

生活習慣の見直し

アレルゲンや刺激物を避け、規則正しい生活を送ることも治療の一部です。睡眠不足やストレスは免疫機能を低下させ、症状を悪化させます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。

湿疹を予防するために日常でできること

湿疹の予防には、日々のスキンケアと生活習慣の工夫が大切です。

毎日のスキンケア

保湿を習慣化することが最も重要です。症状が出ていないときでも、予防的に保湿剤を使い続けることで、皮膚のバリア機能を保ちます。朝晩の2回、全身に塗る習慣をつけましょう。

刺激の少ない石鹸やボディソープを選び、ゴシゴシこすらず優しく洗います。熱いお湯は皮脂を奪ってしまうため、ぬるめのお湯を使いましょう。

アレルゲンを遠ざける

アレルギー性の湿疹がある場合は、原因となる物質を避けることが基本です。金属アレルギーなら金属製のアクセサリーや時計を避ける、食物アレルギーなら該当する食品を除去するといった対策が必要です。ダニやハウスダストが原因なら、こまめな掃除と寝具の洗濯が効果的です。

ストレスマネジメント

ストレスが湿疹を悪化させることは多くの方が経験しています。完全にストレスをなくすことは難しいですが、自分なりのリラックス方法を見つけることが大切です。趣味の時間を持つ、適度な運動をする、十分な睡眠を取るなど、心身のバランスを保つ工夫をしましょう。

衣類の選び方

肌に直接触れる衣類は、綿や絹などの天然素材を選びましょう。化学繊維やウールは刺激になりやすいため、避けるのが無難です。また、きつい下着や締め付ける衣類も摩擦や圧迫による刺激となるため、ゆったりしたものを選びましょう。洗濯の際は、すすぎを十分に行い、洗剤が残らないようにすることも大切です。

自宅でできるセルフケア

医療機関での治療と並行して、自宅でできるケアも症状の改善に役立ちます。

入浴の工夫が重要です。お湯の温度は38〜40度程度のぬるめに設定し、長湯は避けましょう。熱いお湯や長時間の入浴は皮脂を奪い、乾燥を悪化させます。入浴剤を使う場合は、保湿成分が含まれたものを選び、刺激の強い入浴剤は避けてください。入浴後はタオルで押さえるように水分を拭き取り(こすらない)、5分以内に保湿剤を塗りましょう。

かゆみへの対処も大切です。かゆい部分を冷やすと、一時的にかゆみが和らぎます。保冷剤をタオルで包んで当てるのが効果的です。爪は短く切り、無意識にかいても傷がつきにくいようにしましょう。夜間のかゆみが強い場合は、医師に相談して抗ヒスタミン薬を処方してもらうことも検討してください。

環境の整備も忘れずに。室内の湿度を50〜60%程度に保つことで、皮膚の乾燥を防げます。エアコンや暖房を使う際は、加湿器を併用しましょう。また、ダニやハウスダストが悪化要因になる場合は、こまめな掃除と換気が重要です。

アレルゲンの回避を徹底します。食物アレルギーがある場合は、該当する食品を完全に除去します。接触アレルギーがある場合は、原因物質との接触を避けるよう生活を工夫しましょう。

湿疹とじんましんの見分け方

湿疹とよく混同されるのが、じんましん(蕁麻疹)です。どちらも皮膚に赤みやかゆみが出るため似ていますが、実は異なる病態です。

湿疹は、アレルギーや刺激、乾燥などが原因で起こる炎症で、数日から数週間、あるいはそれ以上続きます。慢性化しやすく、同じ場所に繰り返し現れることが多いです。小さなぶつぶつや水疱ができ、掻くとジクジクしたり、カサカサになったりします。

じんましんは、アレルギー反応や物理的刺激、温度変化などが引き金となり、皮膚に赤く盛り上がった膨疹(ぼうしん)が現れます。大きな特徴は、数時間から24時間以内に跡形もなく消えることです。ただし消えても別の場所に新たに現れることがあり、これを繰り返します。

見た目や経過が似ていることもあるため、自己判断せず、医師の診察を受けて正確な診断をしてもらうことが大切です。治療法も異なるため、正しい診断が適切な治療につながります。

よくある質問にお答えします

湿疹は放っておいても治りますか?

軽度の湿疹なら、原因を取り除けば自然に治ることもあります。しかし多くの場合、放置すると悪化し、慢性化するリスクがあります。症状が1〜2週間続く場合や悪化する場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

湿疹をかいてしまうとどうなりますか?

かくことで皮膚に傷がつき、そこから細菌が入って感染症を起こすことがあります(とびひなど)。また、かき壊すことで炎症がさらに悪化し、治りにくくなります。かゆみが強い場合は我慢せず、医師に相談して適切な薬を処方してもらいましょう。

湿疹とアトピー性皮膚炎はどう違うのですか?

湿疹は皮膚の炎症全般を指す広い概念です。アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因とアレルギー体質が関わる特定の慢性疾患で、湿疹の一種と考えられます。アトピー性皮膚炎は症状が長期間続き、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。

季節によって湿疹は悪化しますか?

はい、季節的な変動はよく見られます。冬は空気が乾燥するため、乾燥による湿疹が悪化しやすいです。春は花粉、夏は汗や紫外線、秋は気温の変化が悪化要因になることがあります。季節に応じたスキンケアが重要です。

湿疹予防に良い食べ物はありますか?

特定の食べ物で湿疹を予防できるという科学的根拠は限定的ですが、バランスの取れた食事は皮膚の健康維持に重要です。ビタミンA(緑黄色野菜、レバー)、ビタミンC(果物、野菜)、ビタミンE(ナッツ類、植物油)、オメガ3脂肪酸(青魚)などを含む食品を意識的に摂るとよいでしょう。

ステロイド外用薬は怖いと聞きますが、使っても大丈夫ですか?

医師の指示に従って適切に使用すれば、ステロイド外用薬は安全で効果的な治療薬です。副作用が心配な場合は、使い方や期間について医師とよく相談しましょう。自己判断で中止すると症状が悪化することがあります。

副院長 横山 恵里奈

仁川診療所

副院長 横山 恵里奈

(よこやま えりな)