鼻水は誰もが経験する身近な症状ですが、その背景にはさまざまな原因が隠れています。この記事では、鼻水の仕組みから適切な対処法まで、わかりやすく解説します。
鼻水の役割と仕組み
鼻水は、実は私たちの体を守る大切な防御システムの一部です。鼻腔内の粘膜から分泌される液体で、空気中のほこりやウイルス、細菌などの異物をキャッチして、体内への侵入を防いでいます。健康な状態でも1日に約1リットルの鼻水が作られていますが、普段は気づかないうちに喉の奥へ流れていきます。
しかし、風邪やアレルギーなどで粘膜が刺激されると、鼻水の分泌量が急激に増加します。これが「鼻水が止まらない」と感じる状態です。鼻水の色や粘り気は、その原因を知る重要な手がかりになります。透明でさらさらした鼻水は比較的軽い症状のサインですが、黄色や緑色で粘り気のある鼻水は、細菌感染の可能性を示唆しています。
鼻水を引き起こす主な病気
鼻水の原因となる病気は多岐にわたります。最も一般的なのは風邪(感冒)で、ウイルス感染により鼻水、くしゃみ、咳などの症状が現れます。風邪による鼻水は透明でさらさらしており、通常は数日から1週間程度で自然に治まります。
アレルギー性鼻炎も鼻水の大きな原因の一つです。花粉やハウスダスト、ペットの毛などに対するアレルギー反応により、透明で水のような鼻水が大量に出ます。季節性(花粉症)と通年性があり、くしゃみや目のかゆみを伴うのが特徴です。
副鼻腔炎(蓄膿症)になると、粘り気のある黄色や緑色の鼻水が出ます。鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起こる病気で、頭痛や顔の圧迫感、嗅覚の低下などを伴うことがあります。急性と慢性があり、慢性化すると治療が長期にわたることもあります。
その他にも、鼻中隔弯曲症(鼻の中央の仕切りが曲がっている状態)や鼻ポリープ(鼻腔内にできる良性の腫瘍)なども、持続的な鼻水の原因となります。
鼻水の種類と見分け方
鼻水の性状を観察することで、ある程度原因を推測できます。透明でさらさらした鼻水は、風邪の初期やアレルギー性鼻炎でよく見られます。水のように大量に出る場合は、アレルギー反応が強く起きている可能性があります。
一方、黄色や緑色で粘り気のある鼻水は、細菌感染のサインです。白血球が細菌と戦った結果、鼻水に色がつきます。このような鼻水が続く場合は、副鼻腔炎などの細菌感染症を疑う必要があります。
血が混じった鼻水も時々見られます。多くの場合、鼻を強くかみすぎて毛細血管が切れたことが原因ですが、頻繁に血が混じる場合や、大量の出血がある場合は、腫瘍などの可能性も考慮して医師の診察を受けることが大切です。
診断と検査の流れ
鼻水の原因を正確に特定するには、医療機関での診断が欠かせません。まず医師は問診で、鼻水の性状、量、いつから始まったか、他の症状の有無などを詳しく聞き取ります。その後、鼻腔内を直接観察し、炎症や異常の有無を確認します。
必要に応じて、鼻腔内視鏡検査が行われます。細い内視鏡を鼻の中に入れて、副鼻腔の入り口や鼻の奥まで詳しく観察できます。アレルギーが疑われる場合は、血液検査や皮膚テストでアレルゲンを特定します。
副鼻腔炎が疑われる場合は、X線やCTスキャンで副鼻腔の状態を確認することもあります。また、細菌感染が疑われる場合は、鼻水を採取して細菌培養検査を行い、原因菌を特定して適切な抗生物質を選択します。
注意すべき危険な鼻水
ほとんどの鼻水は軽症で自然に治りますが、以下のような場合は注意が必要です。黄色や緑色の粘り気のある鼻水が1週間以上続く場合は、副鼻腔炎が進行している可能性があります。放置すると慢性化したり、まれに眼や脳に炎症が広がることもあります。
鼻水に繰り返し血が混じる場合も要注意です。特に片側の鼻だけから血の混じった鼻水が出る場合は、腫瘍などの可能性も考慮する必要があります。また、激しい頭痛や高熱を伴う場合は、重症の副鼻腔炎や他の感染症の可能性があるため、早急な受診が必要です。
片側だけに強い鼻水や鼻づまりがある場合も、鼻中隔弯曲症や腫瘍などの可能性があるため、専門医の診察を受けることをお勧めします。
効果的な治療方法
鼻水の治療は原因に応じて異なります。風邪による鼻水は、基本的に対症療法が中心となります。十分な休養と水分補給で自然治癒を待ちますが、症状がつらい場合は、鼻水を抑える薬を使用することもあります。
アレルギー性鼻炎には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が効果的です。点鼻薬も即効性があり、症状の緩和に役立ちます。ただし、血管収縮薬の点鼻薬は長期使用すると逆に症状が悪化することがあるため、医師の指示に従って使用することが大切です。
副鼻腔炎の場合は、抗生物質による治療が必要になることが多いです。粘液を排出しやすくする薬も併用されます。慢性化した場合は、内視鏡手術で副鼻腔の換気を改善することもあります。
鼻洗浄(鼻うがい)も効果的な治療法の一つです。生理食塩水で鼻腔内を洗浄することで、鼻水や異物を物理的に除去し、粘膜の炎症を和らげます。市販の鼻洗浄器具を使えば、自宅でも簡単に行えます。
日常生活でできる予防と対策
鼻水を予防するには、日常生活での工夫が大切です。まず、室内の湿度管理が重要です。特に冬場は空気が乾燥しやすく、鼻粘膜も乾燥して防御機能が低下します。加湿器を使用して、湿度を50〜60%程度に保つことで、鼻粘膜を健康な状態に保てます。
感染症予防の基本である手洗い・うがいも欠かせません。外出後や食事前の手洗いを習慣化し、ウイルスや細菌の侵入を防ぎましょう。マスクの着用も、感染予防だけでなく、花粉やほこりから鼻を守る効果があります。
アレルギー性鼻炎の場合は、アレルゲンとの接触を避けることが最も重要です。花粉の飛散情報をチェックして外出を控える、帰宅時は衣服についた花粉を払い落とす、空気清浄機を使用するなどの対策が有効です。布団や枕カバーもこまめに洗濯し、ダニの繁殖を防ぎましょう。
免疫力を高めることも大切です。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。特にビタミンCや亜鉛を含む食品は、免疫機能をサポートする効果があります。ストレスも免疫力を低下させるため、リラックスする時間を作ることも重要です。
鼻水についてよくある質問
鼻水が1週間以上続く場合や、黄色や緑色の鼻水が出る場合は、医療機関を受診することが重要です。早めに原因を特定し、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぐことができます。
はい、鼻洗浄や温かい蒸気を吸入することが効果的です。また、生姜湯やハチミツを含む飲み物を飲むことで、症状の緩和が期待できます。
鼻水に血が混じることが一時的なものであれば心配いりませんが、頻繁に見られる場合や大量の血が出る場合は、医療機関を受診することが重要です。
子供の鼻水は、風邪やアレルギーが原因であることが多いです。鼻洗浄や適度な湿度の保湿が効果的ですが、長引く場合は小児科医の診察を受けましょう。
軽度の鼻水であれば、市販の抗ヒスタミン薬や点鼻薬が効果的です。ただし、症状が続く場合や悪化する場合は、医師の診察を受けることが推奨されます。
受診の目安とタイミング
鼻水は日常的な症状ですが、以下のような場合は早めの受診をお勧めします。鼻水が1週間以上続いている場合は、単純な風邪ではなく、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の可能性があります。特に黄色や緑色の粘り気のある鼻水が続く場合は、細菌感染が疑われるため、抗生物質による治療が必要かもしれません。
片側だけに強い鼻水や鼻づまりがある場合、激しい頭痛や顔面痛を伴う場合、38度以上の高熱が続く場合も、早急な受診が必要です。また、鼻水に繰り返し血が混じる場合や、嗅覚の低下が続く場合も、専門医の診察を受けることをお勧めします。
鼻水は適切な対処により改善できる症状です。原因を正しく理解し、適切な治療を受けることで、快適な日常生活を取り戻すことができます。症状が続く場合は、遠慮せずに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることが大切です。

仁川診療所
院長 横山 亮
(よこやま りょう)