「心臓はどこにある?」と聞かれると、多くの人が胸の左側を指さします。ドキドキを感じるのが左下あたりなので、自然とそう思ってしまうのですが、実はこれは半分だけ正解です。心臓そのものは、胸のほぼ中央に位置しています。
ここでは、まず心臓の正確な位置から確認し、そのうえで心臓がどんなしくみで動き、どんな役割を担っているのかを、順を追って見ていきます。
心臓は「左胸」ではなく胸の中央にある
心臓は、左右の肺にはさまれた胸の中央の空間にあります。この空間は縦隔(じゅうかく)と呼ばれ、心臓のほかにも気管や食道、神経などが通っています。心臓はその縦隔の大部分を占めるかたちで、胸のちょうど真ん中あたりに収まっているのです。
ではなぜ「左胸」と感じるのでしょうか。これは心臓の形と向きに理由があります。心臓は卵のような形をしていて、下のとがった部分(心尖部:しんせんぶ)がやや左前方に突き出しています。全身に血液を送り出す左心室がこの左下で勢いよく動くため、手を当てるとそのあたりに拍動を強く感じるのです。位置をもう少し詳しくいうと、心臓は第2〜第5肋間の高さにあり、上端の心基部はみぞおちより上、突き出た心尖部は左の乳頭の下あたりに位置しています。つまり「全体は中央、突き出た先端だけが左寄り」というのが正確な姿です。
大きさは、自分の握りこぶしと同じくらい。重さは成人でおよそ200〜300グラムほどで、思ったよりコンパクトな臓器です。全身に血液を巡らせる重要な役目を、この小さなポンプが一手に引き受けています。
心臓のしくみ――4つの部屋と弁でできたポンプ
心臓の内部は、4つの部屋に分かれています。上側の血液を受け取る部屋を心房、下側の血液を送り出す部屋を心室といい、それぞれ左右にあるため、右心房・右心室・左心房・左心室の4部屋になります。左右は中隔という壁で仕切られ、酸素の多い血液と少ない血液が混ざらないようになっています。
それぞれの部屋の境目には弁(べん)がついています。弁はポンプの動きに合わせて開いたり閉じたりする扉のようなもので、血液が逆流せず一方向にだけ流れるよう働いています。右心室の入口が三尖弁、出口が肺動脈弁、左心室の入口が僧帽弁、出口が大動脈弁と、4つの弁がそれぞれ持ち場を守っています。
心臓の壁の大部分は心筋という筋肉でできています。心筋は手足を動かす筋肉とよく似た構造を持ちながら、胃腸の筋肉のように自分の意思では動かせない、という特殊な性質を持っています。さらに心臓には電気信号を自動的に発生させて伝えるしくみが備わっていて、これによって心筋が規則正しく収縮と弛緩をくり返します。この動きが拍動であり、私たちが意識しなくても心臓が休まず働き続けられるのは、このしくみのおかげです。
心臓の役割――全身に血液を届ける2つの流れ
心臓の最大の役割は、血液を全身に送り出すポンプとして働くことです。この血液の流れには、大きく2つのルートがあります。
ひとつは、全身をめぐる流れです。全身から戻ってきた酸素の少ない血液は、まず右心房に入り、右心室へと送られます。もうひとつは肺を通る流れで、右心室から肺へ送られた血液は、そこで酸素を受け取って二酸化炭素を手放します。きれいになった血液は左心房に戻り、左心室へ。そして最も筋肉の発達した左心室から、大動脈を通って全身へと力強く送り出されていきます。血液は右心房→右心室→肺→左心房→左心室という順に、一方通行で循環しているわけです。
この働きは一刻も休むことがありません。心臓は1分間におよそ60〜80回拍動し、心臓を出た血液は約1分で全身をひとめぐりして戻ってきます。運動したときや緊張したときにドキドキするのは、自律神経の働きで拍動が増え、より多くの血液を送ろうとしているサインです。小さな握りこぶしほどの臓器が、生涯を通じて休まずこの仕事を続けているのは、改めて考えると驚くべきことです。
さいごに
心臓は「左胸」にあるというイメージが広く知られていますが、実際には胸の中央に位置し、左下に突き出た先端で拍動を感じている、というのが正しい理解です。位置やしくみを知っておくと、胸の違和感の場所を医師に伝えるときにも役立ちます。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
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仁川診療所
院長 横山 亮
(よこやま りょう)