「夏になるとシャツの脇がいつも濡れて恥ずかしい…」
「人前に出ると脇汗が止まらなくなる…」
「制汗剤を使っても汗ジミが防げない…」
このような脇汗のお悩みを抱えていませんか?
実は、脇汗は誰にでも起こる自然な現象ですが、日常生活に支障をきたすレベルの汗が出る場合、それは単なる「汗っかき」ではなく、皮膚科の疾患かもしれません。
今回は、脇汗に悩む方のために、自宅でできる対策から皮膚科で受けられる最先端の治療法まで、幅広く・わかりやすくご紹介します。
なぜ脇汗は止まらないのか?その原因を正しく知る
脇汗が出る主な理由は、体の中の「汗腺(かんせん)」が働いているからです。人間の体にはエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺があり、脇の下にはどちらも存在しています。エクリン腺は、体温を調節するために水のようなサラッとした汗を出します。一方、アポクリン腺は白く濁った汗を出し、この汗が皮膚の常在菌と混ざると、あの特有の「脇のニオイ」の原因になります。
特に緊張した時、たとえば人前で発表する時や電車に乗っている時など、気温に関係なく脇汗がどっと出てしまう方は、ストレスによる自律神経の刺激で汗腺が過剰に働いている可能性があります。
そして、汗の量があまりにも多く、日常生活に支障をきたすほどであれば、それは「多汗症」と呼ばれる疾患の一種で、皮膚科での診断と治療が必要となることがあります。
自宅でできる脇汗対策 まずは生活習慣の見直しから
脇汗を抑えるには、まず日々の生活の中でできることから始めることが大切です。
たとえば、着ている服の素材を変えるだけでも脇汗の不快感は軽減できます。通気性の良い綿素材や吸湿性に優れたインナーを着用することで、汗を素早く吸収し、ムレやニオイを抑えることができます。特に脇にパッドがついたインナーは、汗ジミ対策として非常に有効です。
また、汗をかいた後そのままにせず、こまめに汗を拭いたり着替えたりすることも大切です。湿った状態が続くと、雑菌が繁殖してニオイの原因にもなります。外出時には、汗ふきシートなどを持ち歩いて、常に清潔を保つ意識を持つと良いでしょう。
加えて、ストレスや緊張によって汗が増える方は、リラックスする時間を持つことも重要です。深呼吸や軽いストレッチ、ぬるめのお風呂などを日常に取り入れて、交感神経の過剰な働きを抑える工夫をしてみてください。
制汗剤の正しい選び方と使い方
ドラッグストアで手軽に手に入る制汗剤は、脇汗対策の基本アイテムですが、選び方と使い方を間違えると効果が出にくくなってしまいます。
まず、制汗剤にはスプレータイプ・ロールオンタイプ・クリームタイプなどさまざまな形状がありますが、汗の量が多い方には密着力のあるクリームタイプやロールオンタイプがおすすめです。これらは肌にしっかりと留まり、効果が長持ちします。
特に注目したい成分が、「塩化アルミニウム」です。これは汗腺の出口を一時的にふさいで、汗の分泌を抑えてくれる働きがあります。医師が処方することもある成分で、比較的高い効果が期待できます。ただし、肌に刺激を感じることもあるため、敏感肌の方は使用前にパッチテストを行うようにしましょう。
使用するタイミングも大切です。入浴後や寝る前など、汗をかいていないタイミングで使うことで、より高い効果が得られます。朝の忙しい時間に慌てて使うよりも、夜のスキンケアの一環として取り入れると効果的です。
市販薬でも改善しないときは皮膚科へ。「ボトックス注射」
生活改善や市販薬を使っても脇汗が止まらない場合は、皮膚科での治療を検討する時期かもしれません。近年、脇汗治療の選択肢として注目されているのが「ボトックス注射」です。
ボトックス注射とは、筋肉の動きを一時的に弱める「ボツリヌス毒素」を脇の皮膚に注射することで、汗腺への神経の伝達をブロックし、発汗を抑える治療法です。
治療の効果は注射後2〜3日で現れ始め、1週間ほどでピークに達します。そして、その効果は約4〜6ヶ月間持続します。定期的に治療を受けることで、年間を通じて快適に過ごすことができます。
また、皮膚を冷やしたり、麻酔クリームを使用したりすることで、注射時の痛みを最小限に抑えることが可能です。ダウンタイムもほとんどなく、施術当日から普段通りの生活ができますが、激しい運動や長時間の入浴は数時間程度避けた方が良いとされています。
ボトックス注射は保険適用になる?
実は、ボトックス注射は「原発性腋窩多汗症」と診断され、一定の条件を満たせば保険適用で治療を受けることができます。
例えば、「両脇に日常生活に支障をきたす多量の汗があり、6ヶ月以上持続している」などの診断基準を満たしていれば、医師が保険適用の対象と判断する場合があります。
費用面が気になって治療に踏み出せない方も、まずは診察を受けて相談してみることをおすすめします。
ボトックス以外にもある、最新の脇汗治療の選択肢
ボトックス注射以外にもいくつかの治療法があります。
日本で初めて保険適応となった塗り薬である「エクロックゲル」は1日1回脇に外用を継続するだけで汗の量の改善が期待できます。12歳から処方が可能です。
また、「ラピフォートワイプ」は1回使い切りの拭き取りシート状の薬剤で、簡便かつ衛生的に使用することができます。1日1回両脇に塗布し、9歳以上から使用が可能です。
いずれも作用機序は同じで、交感神経とエクリン汗腺の間の神経伝達をブロックする抗コリン薬に分類されます。
抗コリン薬ですので、緑内障(閉塞隅角)、前立腺肥大症の方には使用できません。
どちらの治療薬も4〜6週使用した患者さんの約半数が発汗量が50%以下になり、日常生活にあまり支障がないレベルにまで改善したという臨床試験の結果が出ています。
また、より根本的な治療として、交感神経を遮断する手術も存在します。ただし、手術にはリスクもあるため、現在はボトックス注射や外用療法が第一選択となることが多いです。
脇汗でお悩みの方へ まずは一人で悩まず、専門医へ相談を
脇汗は非常に身近な悩みであると同時に、放っておくと人との関わりや自己評価に影響することもあります。市販の制汗剤で効果が出ない、何をやっても改善しない、そう感じたときは、皮膚科での専門的な治療を検討してみてください。
当院では、患者さま一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせて、最適な治療をご提案しています。脇汗に悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
塩化アルミニウムを含むものが効果的ですが、肌が敏感な方は注意が必要です。
症状の程度によって異なりますが、治療により汗の量を大幅に抑えることは可能です。
一度治療すればずっと汗は止まりますか?
もちろんです。お気軽にご来院ください。
まとめ
脇汗は、ちょっとした生活の工夫や正しい知識を持つことで、大きく改善する可能性があります。しかし、それでも解決しない場合は、皮膚科での治療をおすすめします。
脇汗・多汗症にお悩みの方へ、保険診療での治療や最新の医療技術を用いた対策をご提案しています。ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
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